【病院向け】令和8年度診療報酬改定の基本方針と主なポイント|機能分化・入院医療・人材確保【第2弾】
本記事は、病院向けに令和8年度診療報酬改定の全体像を解説するシリーズの第2弾です。
今回は、診療報酬改定の前提となる社会情勢、改定率、基本方針のポイントなど、改定概要を整理します。令和8年度診療報酬改定の概要をまず把握したい、病院経営層・事務部門の方に向けた内容です。
令和8年度診療報酬改定の基本方針概要
近年の診療報酬改定における基本方針では、「改定にあたっての基本認識」と「改定の基本的視点と具体的方向性」が示され、後者については4つの項目が設定されています。
今回の基本方針概要を読み解くにあたっては、前回の令和6年度診療報酬改定の方針と比較しながら、令和8年度改定で新たに重視された視点に着目してみます。
令和6年度改定との違いと令和8年度改定の特徴
令和8年度診療報酬改定の基本方針概要を読み解くにあたっては、前回の令和6年度診療報酬改定との違いに着目することが重要です。
令和6年度診療報酬改定と令和8年診療報酬度改定の主な違いを整理すると、以下の通りです。
表1 令和6年度改定と令和8年度改定の基本方針概要の比較
| 令和6年度改定 | 令和8年度改定 | |
|---|---|---|
| 改定の背景 | 物価高・賃上げ、同時改定への対応 | 物価・賃金上昇と人口減少への対応 |
| 重要課題 | 人材確保・働き方改革 | 物価・賃金・人手不足等への対応 |
| 技術活用 | 医療DX・ICT活用の推進 | AI・IoTを含むDX活用の推進 |
| 医療提供体制 | ポスト2025を見据えた機能分化・連携 | 2040年頃を見据えた機能分化・連携 |
| 地域医療 | 地域包括ケア・医療介護連携 | 医療資源の少ない地域への支援 |
まずは令和6年度診療報酬改定の基本方針概要をおさらいします。
令和6年度診療報酬改定では、物価高騰・賃金上昇への対応や、診療報酬・介護報酬同時改定による医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、コロナウイルス等の新興感染症への対応等が掲げられていました。
特に、賃上げや働き方改革を重要課題として設定するとともに、医療DXを含めた医療機能分化についても言及されているのが特徴的でした。
令和6年度診療報酬改定を踏まえ、令和8年度診療報酬改定の基本方針概要を見ると、改定に当たっての基本認識では、「人口構造の変化や人口減少の中での人材確保」、「全ての地域・世代の患者が適切に医療をうけること」、「医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制の構築」が新たな文言として追加されています。
これらについては、第一弾で記載しました通り、日本の人口構造の特徴である将来的な高齢化の進展に伴う高齢者の医療需要増加と、人口減少に伴う働き手不足を背景として、これらの課題解決に向けた改定であることを明示している結果です。
続いて、改定の基本的視点と具体的方向性を見ると、重要課題は「人手不足等の医療機関等を取り巻く環境の変化への対応」に変わっています。さらにつ、ICTに加えて、業務効率化に資するAI、IoTの活用が、人手不足への対応策として改定に取り入れられていることも大きな特徴です。
また、「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携」については、新たな地域医療構想でも提言されている「治し、支える医療」の実現に向けて、更なる機能分化が促進される内容となっています。
加えて、「地域における医療の確保」に向けて、人口・医療資源の少ない地域への支援や、医療従事者確保の制約が増す中で必要な医療機能を確保するための取組が新たに掲げられています。これらの点についても、今回の改定において各種評価が行われていることが特徴と言えます。
令和8年度診療報酬改定の主なポイント
令和8年度診療報酬改定では、賃上げや物価への対応、入院医療の見直し、業務効率化・負担軽減、人口少数地域・医師偏在対策、外来医療機能分化、在宅医療・訪問看護推進、各分野対応の8項目が挙げられています。
図3の中でも特に病院経営への影響が大きい内容として、入院医療の見直しが挙げられます。
特に、急性期・高度急性期入院医療の見直しにおける、急性期病院一般入院基本料の新設、急性期総合体制加算の新設(既存評価の改組)は、医療機能の分化を強力に推し進める要素であり、今回の診療報酬改定を受けての診療報酬・医療機能の選択によって、多くの急性期病院の今後の命運が分かれる可能性がある改定です。
また、包括期・慢性期入院医療の見直しについても、今後対応が求められる高齢者医療への対応を目的として、地域包括医療病棟の要件緩和に高齢者特性への配慮が考慮されています。
さらに、業務効率化・負担軽減については、ICTやAIを活用することで、診療報酬上の施設基準の人員配置要件の緩和が今回改定で初めて認められました。今回改定では、一部の看護配置や医師事務作業補助者の配置のみとなっていますが、日本の人口構造の課題を踏まえると、今後の改定でこのような要件緩和はより推進されていくと考えます。
人口少数地域・医師偏在対策については、診療科偏在対策として、地域医療体制確保加算2新設による特定診療科への評価や、外科医療確保特別加算の新設による外科等への評価など、不足する診療科医師への処遇改善と医師確保を、診療報酬改定によって推進しようとする動きがあります。
外来医療機能分化では、特定機能病院において逆紹介患者割合の基準引き上げや、基準未達の場合の減算対象患者の拡充によって、診療報酬上の評価・減算を通じて外来機能の分化をさらに促進する動きがあります。
各分野対応としては、特に救急医療体制を確保している病院への評価や、救急医療の連携促進に向けた点数の引き上げなどが挙げられます。
今回令和8年度診療報酬改定で病院が押さえるべきポイント
今回の診療報酬改定では、賃上げや物価への対応として診療報酬のベースが引き上げられている一方で、医療機関の機能分化や医療機能の集約が進むような改定内容となっています。
そのため、病院においては、単に個別の点数や施設基準の変更を確認するだけでなく、自院が地域の中でどのような医療機能を担うのかを改めて整理することが重要です。
特に、急性期・高度急性期、包括期・慢性期、外来、在宅、救急医療など、それぞれの分野で評価の見直しが行われているため、自院を取り巻く地域の医療需要、競合環境、人員体制を踏まえたうえで、将来を見据えた医療機能の選択が求められます。
また、診療報酬改定は、制度を理解するだけでなく、実際の診療報酬の届出・算定につなげて初めて経営上の意味を持ちます。今回の改定内容を踏まえ、自院の機能に応じた施設基準の確認や届出方針、算定体制の整備を進めていくことが非常に重要となります。
次回、第3弾は、入院基本料、入院基本料等加算についてポイントとなる改定内容の具体について解説します。
(執筆者:Y.A 医業経営コンサルタント)
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